偉人ゴルフ格言 第5回「ココ・シャネル」
第5回 「ココ・シャネル」
もしも歴史上の偉人たちが“名ゴルファー”だったなら…
世界随一のファッションブランドのひとつ、「シャネル」。
創業者であるココ・シャネルは幼い頃に母親に死なれ、その後父親にも捨てられて孤児として不遇な少女時代を過ごしました。
成人してからはお針子として生計を立てながら歌手を志しましたが夢敗れ、気晴らしに作った帽子が評価を受けたのが彼女のキャリアのはじまりです。
幼少の頃より苦労を重ね、挫折と失敗を繰り返して数多くの名言を残したシャネル。
そんな彼女が美について語った言葉として有名ですが実は違います。
ファッションと同じくらいゴルフに情熱を捧げたシャネル。
社交界に入り浸るうちに将校たちとともにゴルフを楽しむようになりました。
ラウンドの際の彼女のファッションは流石のもの。
あるときはフリルのついたロングスカートを風に揺らめかせ、あるときは真紅のジャケットに身を包んでナイスショットを連発しました。
その華麗なプレーに一緒に回っていた将校が嘆息まじりに言いました。
「さすがはシャネル女史。ファッションもゴルフも実に色彩に富んでいますな」
別の将校が続きます。
「まったく。ショットごとにスイングを使い分けているのでしょう」
さらに別の将校も。
「僕もその半分でいいから技の引き出しがあれば」
ところがシャネル。
「まさか。私のスイングはひとつですわ」
「ご謙遜を」
将校たち、笑って取り合いません。
ロングホールの二打目地点。一人の将校がウッドを持って言いました。
「ウッドはやはり払うように打つのがいいのでしょうな」
「でしょうな」
「しかり」
一同、シャネルに顔を向けます。
ところが「さあ」とシャネル。「スイングを変えることがないので」
「ご冗談を」
将校たち、やはり笑い飛ばします。
「クラブによって打ち方を変えるのは常識でしょう?ウッドは横から払うように、アイアンは上から打ち込むように、ウェッジはダフらせる要領で。まあ強いて言えばパットは人それぞれといったところでしょうか」
「パットに形なしと言いますからな」
そして将校は宣言どおり払うようにしてウッドで打ちました。しかし結果は大胆なトップ。ボールはわずかに前に転がってすぐそこに。
将校、まるでクラブが悪いかのようにヘッドを不満げに眺める始末。
「わたくし、思うのですけど」しばらくしてシャネルが口を開きました。
「クラブの長さによってヘッドが描く孤の形が変わるだけであって、スイング自体が変わるわけではありませんわ。そうやってクラブごとにスイングを変えようとするから、スイングが乱れてショットが定まらないのではないですか」
「……」
将校たち、今度は笑い飛ばすことなくただ黙ってしまいました。
パターからドライバーまですべてのクラブで打ち方は同じ。パット、アプローチショット、バンカーショット、ティショット、あらゆるショットで打ち方は変えない。スイングはひとつ。
古今東西、数多のトッププロが一様に同じ言葉を残しています。
何事につけてよく言われる「シンプル イズ ベスト」。
ゴルフも然り、のようです。