偉人ゴルフ格言 第2回「マリー・アントワネット」
第2回 「マリー・アントワネット」
もしも歴史上の偉人たちが“名ゴルファー”だったなら…
世間知らずで贅沢の限りを尽くした18世紀フランスの王妃、マリー・アントワネット。
飢饉と貧困のために民衆が一切れのパンもないほど生活に苦しんでいることを臣下が報告した際に彼女が言い放った言葉として有名ですが実は違います。
贅沢と同じくらいゴルフが大好きだった彼女。当時は紳士のスポーツだったゴルフですが、王妃である彼女だけは特別でした。
ある日彼女が貴族たちとゴルフに出かけたところ、一人の貴族がバンカーにボールを入れてしまいました。
貴族は荷物持ちをさせていた使用人の少年に言いました、「ウェッジをよこせ」。
ところがどれだけ鞄の中を探しても見つかりません。少年は青ざめました。ウェッジを忘れてきたことに気付いたのです。
実はこの少年、毎朝ニワトリたちが生んだ卵をウェッジのフェースに乗っけて遊ぶのを習慣にしていました。今朝急に主人である貴族から「ゴルフに行くぞ」と言われて慌てて準備したのでうっかり忘れてきてしまったのです。いまごろウェッジは鶏小屋のなか。
もちろん貴族はそんなことは露とも知りませんが大激怒。剣を抜き放ち、「叩き切ってやる!」といきりたちました。
少年は泣いて懇願しましたが貴族は聞く耳を持ちません。当時の貴族にとっては人命よりもスコアのほうが大切だったのです。
そのとき、彼女がことも無げに言いました。
「ウェッジがないなら、パターで打てばいいじゃないの」
一同、みな口をあんぐり。それから笑い出しました。
バンカーでパターを使うなんて話、聞いたこともなければ考えたこともありません。「所詮女だ、ゴルフはわからないな」などと内心みな彼女を笑いました。
でもそんな空気には慣れっこ。常識や慣習に囚われなかった彼女はすたすたとバンカーのなかに足を踏み入れるとパターでボールを打ちました。
一同、びっくり。なんとボールは砂の上を勢いよく転がってバンカーから飛び出たじゃありませんか。あまりの驚きに「マリー・アントワネットは魔女だ!」などと腰を抜かす者も。
でももちろん魔法でもなんでもありません。呆れた顔で彼女は言いました。
「騙されたと思って打ってみなさいよ」
半信半疑でその貴族が試してみたところ、ボールは同じようにバンカーから脱出。他の貴族もこぞって試してみましたが結果は同じ。
みな狐につままれたような顔でその場に立ちほうけてしまいました。
「出すだけならパターでも十分よ」
あっけらかんと彼女は言い切ります。
なんとか面目を保とうと貴族が反論しました。
「で、でも、ぱ、パターを使うなんて……」
「あら、バンカーではパターを使っちゃいけない、なんてルールあったかしら?」
「こ、こんなのバンカーショットじゃ……」
「バンカーではバンカーショットじゃなきゃいけない、なんて誰が言ったの?」
「…………」
完膚無きまでに叩きのめされたその貴族は逃げ出すようにしてコースをあとにし、命を救われた使用人の少年は涙を流して彼女に感謝したということです。
まあそれはさておき、ぜひ一度みなさんも先入観を捨てて試してみては?