偉人ゴルフ格言 第3回「レフ・トルストイ」
第3回 「レフ・トルストイ」
もしも歴史上の偉人たちが“名ゴルファー”だったなら…
ロシアの小説家であり思想家、レフ・トルストイ。
ドストエフスキーと並んで19世紀ロシアを代表する文豪は徹底した非暴力主義を貫きながら民衆を圧迫する政府や国家と対峙し続けました。
そんな彼が政府を非難するばかりでなにも行動を起こさない民衆を嘆いた言葉として有名ですが、実は違います。
ロシアの短い春にゴルフにいそしむことをなによりも楽しみにしていたトルストイ。
雪解けのある日、トルストイは貴族仲間とゴルフに出かけました。
ラフにはまだ雪が残り、芝の上を吹く風はまだまだ肌寒い時期。それでもトルストイたちはウォッカを飲みながら陽気にラウンドを続けました。
とはいえラフにボールを入れてしまうと大変です。ボールは雪の中に沈みこんで総出で探しまわっても見つかりません。たとえ見つかったとしても雪に覆われたボールは打っても打ってもちっとも前に進まず雪のなか。
すでに3つボールを無くした一人の貴族が言いました。
「もう絶対にボールは曲げないぞ」
2つボールを無くした貴族が続きます。
「そのとおり。ストレートボールを打つんだ」
5つボールを無くした貴族は悲痛な声。
「今度曲げたら政府に処刑される覚悟で打つ」
なにもそこまで、と思われるかもしれませんが、今と違って昔はボール一つが恐ろしく高価な時代。彼らの気持ちもわかろうというもの。
しかしトルストイだけは違いました。
「逆だよ。ボールは曲げて打つんだ」
一同、口をぽかん、と開けてトルストイを見ました。それから一人の貴族が腹を立てて言いました。
「意地悪はよせ。君が運良くボールを無くしてないからって」
「運じゃない。私は意図してボールを曲げて打っているんだ」
ボールは球体。そこに平べったいクラブを当てるのだからボールが曲がるのはそもそも道理。それなら確率の低いストレートボールを打とうするより、最初から狙いたい方向に行くように(あるいは行ってほしくない方向に行かないように)ボールを曲げたほうがよほどスコアが良くなる確率が高い。
たとえば右方向に打ちたくないなら左にボールが曲がるドローボールを打ち、左方向に打ちたくないなら右に曲がるフェードボールを打つ。
それがゴルフというものだ、とトルストイは説きました。
「たしかにストレートボールは美しい。しかしゴルフというゲームはスコアを競うのであって美しさを競うのではない」
理想を追い続けたトルストイ。かたやゴルフにおいては合理的な考えの持ち主だったようです。
自在にボールを曲げる「インテンショナルショット」は高等技術だからまずはまっすぐ打つ練習だ、と思われているアマチュアゴルファーの方が多いようですが、それは逆です。
騙されたと思ってまずはインテンショナルショットの習得に励んでください。その過程でまっすぐ打つにはどうすればいいか感じられるようになるんです。